…ズ、ズ、ズッシリ…!
これが何の音か、
当塾の連載に熱心な読者にはピンとくるはずである。
その通り、
栄えある本日の開講に合せて
塾生から送られてきたハガキの束を
編集部から受取った時に、
塾長である私の手と心に轟いた音である。
重ねて、ズッシリ!
レキオ史を飾る投稿数という。
誠にもって幸先のよいスタートだ。
鋭い塾生諸君は、
この連載が投稿の数量にひとえにかかっていることを
すでに見抜いているわけだ。
コピーライターの資質の一つに、
〈まっ先に目を付ける〉(御教条①)がある。
も一つ、
〈恥なんぞ気にせず、まず面白がり、
それを武器にできる〉(御教条②)がある。
この連載を誰よりも早く知って、
誰よりも早く投稿してきた塾生は、
それだけでライターの資格十分だ。
従って、全員に点をあげたいのだが、
そーすると『全琉』と銘打った当塾の
有難味とケンイがなくなる。
そこで厳正=公正=是是非非憲法を貫くことにした。
そのぶん、
点がもらえた時の歓喜が
本物であることを三年保証する。
またそうしてこそ
コピー上達の王道が敷かれ、
自分の点や位階をまわりの人々に
胸張って自慢できるというものだ。
紋切り型がドッサリ
では、早速、今週のエクササイズ!
課題はこのたび復元工事の始まった『首里城』に、
本土の人々が訪れたくなったり、
関心をもったりするキッカケとなるコピーを作る、
であった。
戦争で焼失する前の王朝古来の首里城正殿。
応募作は、このイメージを基に作られた。まさに古色蒼然。
因みに復元後の正殿はページ末尾に掲載。
なにせ琉球王国の歴史の塊の如き存在なので、
案の定、王朝ロマンをまぶしてはいるが、
中身が詰ってない紋切り型のムードコピーが
半分以上を占めた。
あなたのはどうでしたか?
確かにこの手法もあるが、
このラインは三島由紀夫級のレトリックの達人でないと
鑑賞にたえないのである。
例えば応募作の中に多く見られた、
『歴史の真珠』や
『古い歴史の新しい宮殿です』では、
ヒッカカリがよわい。
やはりそれらの同巧多数とは一線を画して、
目の付け所の新鮮なものに佳作が多かった。
封切りのカードを
気持よく配るように並べてみよう。
●大浜尚三
『城跡ならいっぱいあるけど、うん、城を見るのは初めてだ』(鍮)
事実をシンプルに突いている。
●上原泰信
『平面ではなく、立体でごらんください』(鍮)
もう絵や写真で見る
必要はありませんというアプローチだが、
もっとポジティブに
『お待たせ致しました。いよいよ立体でご覧になれます』
としたら、尚、よい。
●我謝幸男
『守礼の門よりおっきいよ』(鍮)
ナンダ!と怒る人がいるかもしれないが、
子供の素直な驚きのような視点が
当塾を支えてゆく柱の一本である。
実際、あのサミしい守礼門に
期待外れの観光客も多いのだ。
バカバカしさは創造の源
次のような阿呆らしいが、
確かに笑えるコピーも許す。
硬直しない自由な発想は、伝達を可能とするからだ。
但し、
点は鍮石簪(ちゅうじゃくかんざし、いわゆる銅の簪)の半分の(石)。
●ヤーグマヤー
『首里城ヘシュリ・シュ・、シュ・、シュ』
同じく
『和風のお城とは一味違います。エスニック風味に仕上りました』
以上、ぶつけられないように、
(石)二個をポケットに。
が、名前を何とかしなさい。
他の塾生にもいえることだが、
ペンネーム可というのは
時代の三千米先をゆく“作家”としてふさわしいネーミングを、
もしくは差障りあるなら義名をという意味である。
さらに、並べる。
●伊是名教子『首里城訪ねれぱ守礼人』(鍮)
『訪ぬれば、守礼びと』で尚、感じ深まりて候。
●小林幹雄『首里一大きなお屋敷、新築!』(鍮)
物件情報の手法もある。
●砂川春男『レキオの共同幻想城』(鍮)
こう堅くやるより、大工さんだから
『天井は私が作りました。見上げに来てください』
とホラを吹いてほしかったなあ。
●渡名喜俊洋『南蛮文化の華、燗漫』(石)
かなり甘いが、中二の向学心を買った。
里之子、第一号、誕生!
さて、今週の一等賞を発表するぞ。
●饒平名和彦『歴史をリゾート』(銀)
この島の過去と未来を
巧みにつなげた悠久の時が、ここには流れている。
無念にも掲載できなかった有望な塾生諸君、
その辺のワケを感じ取って戴けただろうか。
既制概念のべールに頼らず、
たとえば、
『県知事発表!第二十代の琉球国王は、
参観者の中から選ぶことに決定しました』的な
攻めがほしい。
とはいえ、今回の最多投稿の両雄、
藤江良雄と本部栄治、
並びに同巧多数の中からヌケヌケとぬけた超紋切りの
『ようこそ琉球国へ』の瀬長亀子の三君に、
塾長の職務特権で特別に(石)を進呈する。
以上、第一回で
一名の里之子と七名の子が誕生した。
まずはめでたい。一層の栄達を。
まだ位のない人、投稿のまだの人は、
すぐ追いつくはずだから、チバリヨー!
1998年落成の首里城正殿i儀式。
何の前触れもなしに突如食べたくなるものに、
『沖縄そぱ』がある。
確固とした"“食格”があるのだ。
この味わい深いそばを本土の人々が
三日に一度は食べたくなるような、
おいしいコピーを考えてほしい。
ヤリガイあるでしょ?
では、待っとるよ、あなたのコピー!
ここ掘れワンワン、あなたの才能!
※『沖縄そば』の締}切は1月26日、
発表は254号(2月9日付)。
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