(助手)
今年も当塾の最終週となり、
恒例のベストテンの発表でありますが、
塾長の総括をお聞かせ下さいませ。
(塾長)
一言で括(くく)れば、
塾生のレベルがあがって、
凄(す)っごいわあアナタ、だね。
(助手)
どっかの奥さんのような
言い草ですが…
(塾長)
そう。
年間40課題以上をこなすスタミナ、
フェティッシュな着眼、
そしてコトバの勃起度。
よく見知ったウチナームンの数々が、
下のベストテンのコピーに代表されるように、
新たな虚々実々の像をもって蘇り、訴えかけてくる。
拳銃の狙撃事件が多く物騒な年だったが、
こんなコトバの銃弾なら何度殺されても嬉しいね。
(助手)
塾長を脇で見ていると、
毎週まるでコトバの弾丸の嵐の中に
たたずむ戦士のようでした。
しっかり撃たれ、
当たるたびに抜く手も見せぬ評のコトバを返すのは
悲愴かつ快哉でした。
(塾長)
この応酬が生き甲斐で、
この塾をやっているといっても過言ではないねえ。
撃たれる生き甲斐!
(助手)
中には流れ弾もあつて、
倒れてましたねえ。
(塾長)
運樹も結構ヤラれていたな。
ふたり並んで横たわり、
空ゆく雲を眺めていたこともあったなあ。
第⑩位
工工四(クンクンシー)
(初代大世主幹雄作)
『象形音符』
(評)
通好みのシプいコピー。
物の形を模した字が象形文字とするなら、
象形音符は音の形を模した意味になる。
音に形はないが、三線に親しむと
工工四の文字がその音の形に見えてくる。
第⑨位
旧暦
(豊見城高嶺王子勇幸作)
『お月さまがあるうちはあるさ』
(評)
沖縄の旧暦が形骸化した時が
本土化の完遂する時かも知れない。
しかし夜空の月が手品で消えたみたいに
消滅しない限りは残るはずね。
第⑧位
沖縄の病院
(九代大世主訓次作)
『ゲートボールもいいけど、
病院もいいねえ』
(評)
沖縄の病院はお年寄りにやさしい。
長寿を崇める風土がそうさせるのかもね。
でも用もないのに行くのはやめませう。
第⑦位
チャンプルー料理
(二代大世主幸男作)
『ウチナーンチュに一週間、
チャンプルーを与えないと死んでしまいます』
(評)
塾長の親類の家で実際に実験したところ、
三日目に音をあげ、「ヤクをくれ」と叫んだそうだ。
第⑥位
パイプライン
(二代大世主幸男作)
『ベンチャーズのパイプラインはテケテケテケ
米軍のパイプラインはデテケデテケデテケ』
(評)
モジリの技も
これくらいキレイに決まると快感。
ベンチャーズを聞いて育った世代は
ちょうど沖縄復帰運動に身を投じた世代だから、
快感もひとしおでしよう。
第⑤位
赤土汚染
(初代大世主幹雄作)
『海がレッドで、心がブルー』
(評)
一度聞いたら耳に焼きつくようなフレーズ。
柳眉を逆立てず、
口角泡を飛ばしてない論調が買いですね。
環境保護団体か不漁に泣く漁業組合の
テーマソングのタイトルにどうでしょうか。
第④位
亀甲墓
(初代聞得大君良江作)
グ ソー
『後生邸。』
(評)
亀甲墓のあの威風堂々の佇いは、
「邸」というにふさわしい。
このわずかな三文字の
インパクトを買う墓業者はいないものでしょうか。
海の見える墓のビジュアルでやると客が殺到ね。
第③位
イカの墨汁
(仲西睦美作)
お くち よご
『御口汚しでは
こざいますが、
美味しゅうございます』
(評)
語り口が、この独創的な料理のコンセプトを
十二分に伝えて絶品である。
料亭で美しい琉装のお内儀(かみ)にそう言われたら、
イカ墨を敬遠する人もソノ気になってしまうであろう。
第②位
沖縄のバスレーン
(初代聞得大君良江作)
『一線をこえてはいけませんわ。』
(評)
文句なしの大傑作。
女のキリ札的言辞が県警の要望を巧みに代弁。
そこまで言われれぱドライバー諸賢は納得して
バズレーンを迂回すること間違いなし!
この立て看を区間入口脇に。
第①位
ガジュマル
(石川伊波王子徳明作)
『恋を語るならゆうなの下(した)へ行きなさい。
傷ついたなら私の下(もと)へ来なさい。』
(評)
イメージの繁る木ともいえるガジュマルを、
作者ならではのイメージでしっかりと定着してくれた。
木材としてではなく、
生きた樹木さえこのように使い分けるウチナーの生活の知恵…。
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第③位
『赤瓦屋根の家』を「あなた」のメロディーで
(初代聞得大君良江作)
♪もしも私が家を建てたなら~
小さな赤瓦家(アカガーラヤー) 建てたでしょう
大きなヒンプン~小さなヒヌカン~
部屋には先祖代々(ふるい)トートーメーがあるのよ~
真赤な瓦と白い漆喰(しっくい)~
お屋根の上にはシーサー、シーサー、シーサーが居てほしい~
それが私の夢だったのよ~
いとしい赤瓦家(アカガーラヤー) 今~高値~
第②位
『沖縄の写真館』を「霧の摩周湖」の旋律で
(二代大世主幸男作)
♪灰に抱かれて 静かに眠る~
草木見えない 焼け跡にひとつ~
ちぎれた写真の 思い出探し~
写らぬ部分を きれいに描き込み~
位牌にあなたの 名前を呼べば~
微笑み返す 補修後の遺影~
第①位
『アイスクリン』を「夏の思い出」の旋律で
(初代聞得大君良江作)
♪夏が来ればお店出す~
はるかは高二名護娘~
ブルーなパラソル 熱(アチ)ビ一ラチー
ジリジリ焼ける ブチクン道~
アイスクリンの花が 咲いている~
売上(ゆめ)見て咲いている 道のほとり~
チムグリ色に 黄昏(たそがれ)る~
はるかの売上(ゆめ)~遠い売上(ゆめ)~
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