Chapter.2


 
今回のテーマは、1994年年間ベスト10です




(助手)
今年も当塾の最終週となり、
恒例のベストテンの発表でありますが、
塾長の総括をお聞かせ下さいませ。

(塾長)
一言で括(くく)れば、
塾生のレベルがあがって、
(す)っごいわあアナタ、だね。

(助手)
どっかの奥さんのような
言い草ですが…

(塾長)
そう。
年間40課題以上をこなすスタミナ、
フェティッシュな着眼、
そしてコトバの勃起度。
よく見知ったウチナームンの数々が、
下のベストテンのコピーに代表されるように、
新たな虚々実々の像をもって蘇り、訴えかけてくる。
拳銃の狙撃事件が多く物騒な年だったが、
こんなコトバの銃弾なら何度殺されても嬉しいね。

(助手)
塾長を脇で見ていると、
毎週まるでコトバの弾丸の嵐の中に
たたずむ戦士のようでした。
しっかり撃たれ、
当たるたびに抜く手も見せぬ評のコトバを返すのは
悲愴かつ快哉でした。

(塾長)
この応酬が生き甲斐で、
この塾をやっているといっても過言ではないねえ。
撃たれる生き甲斐!

(助手)
中には流れ弾もあつて、
倒れてましたねえ。

(塾長)
運樹も結構ヤラれていたな。
ふたり並んで横たわり、
空ゆく雲を眺めていたこともあったなあ。



第⑩位
工工四(クンクンシー)
(初代大世主幹雄作)

象形音符

(評)
通好みのシプいコピー。
物の形を模した字が象形文字とするなら、
象形音符は音の形を模した意味になる。
音に形はないが、三線に親しむと
工工四の文字がその音の形に見えてくる。



第⑨位
旧暦
(豊見城高嶺王子勇幸作)

お月さまがあるうちはあるさ

(評)
沖縄の旧暦が形骸化した時が
本土化の完遂する時かも知れない。
しかし夜空の月が手品で消えたみたいに
消滅しない限りは残るはずね。




第⑧位
沖縄の病院
(九代大世主訓次作)

ゲートボールもいいけど、
病院もいいねえ


(評)
沖縄の病院はお年寄りにやさしい。
長寿を崇める風土がそうさせるのかもね。
でも用もないのに行くのはやめませう。




第⑦位
チャンプルー料理
(二代大世主幸男作)

ウチナーンチュに一週間、
チャンプルーを与えないと死んでしまいます


(評)
塾長の親類の家で実際に実験したところ、
三日目に音をあげ、「ヤクをくれ」と叫んだそうだ。



第⑥位
パイプライン
(二代大世主幸男作)

ベンチャーズのパイプラインはテケテケテケ
米軍のパイプラインはデテケデテケデテケ


(評)
モジリの技も
これくらいキレイに決まると快感。
ベンチャーズを聞いて育った世代は
ちょうど沖縄復帰運動に身を投じた世代だから、
快感もひとしおでしよう。



第⑤位
赤土汚染
(初代大世主幹雄作)

海がレッドで、心がブルー

(評)
一度聞いたら耳に焼きつくようなフレーズ。
柳眉を逆立てず、
口角泡を飛ばしてない論調が買いですね。
環境保護団体か不漁に泣く漁業組合の
テーマソングのタイトルにどうでしょうか。



第④位
亀甲墓
(初代聞得大君良江作)


グ ソー
     『後生邸


(評)
亀甲墓のあの威風堂々の佇いは、
「邸」というにふさわしい。
このわずかな三文字の
インパクトを買う墓業者はいないものでしょうか。
海の見える墓のビジュアルでやると客が殺到ね。



第③位
イカの墨汁
(仲西睦美作)
 
お   くち   よご   
      『御口汚しでは
こざいますが、
美味しゅうございます



(評)
語り口が、この独創的な料理のコンセプトを
十二分に伝えて絶品である。
料亭で美しい琉装のお内儀(かみ)にそう言われたら、  
イカ墨を敬遠する人もソノ気になってしまうであろう。



第②位
沖縄のバスレーン
(初代聞得大君良江作)

一線をこえてはいけませんわ

(評)
文句なしの大傑作。
女のキリ札的言辞が県警の要望を巧みに代弁。
そこまで言われれぱドライバー諸賢は納得して
バズレーンを迂回すること間違いなし!
この立て看を区間入口脇に。



第①位
ガジュマル
(石川伊波王子徳明作)


恋を語るならゆうなの下(した)へ行きなさい。

傷ついたなら私の下(もと)へ来なさい。



(評)
イメージの繁る木ともいえるガジュマルを、
作者ならではのイメージでしっかりと定着してくれた。
木材としてではなく、
生きた樹木さえこのように使い分けるウチナーの生活の知恵…。


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第③位 
赤瓦屋根の家』を「あなた」のメロディーで
(初代聞得大君良江作)


♪もしも私が家を建てたなら~

小さな赤瓦家(アカガーラヤー) 建てたでしょう

大きなヒンプン~小さなヒヌカン~

部屋には先祖代々(ふるい)トートーメーがあるのよ~

真赤な瓦と白い漆喰(しっくい)

お屋根の上にはシーサー、シーサー、シーサーが居てほしい~

それが私の夢だったのよ~

いとしい赤瓦家(アカガーラヤー)  今~高値~



第②位
沖縄の写真館』を「霧の摩周湖」の旋律で
(二代大世主幸男作)


♪灰に抱かれて  静かに眠る~ 

草木見えない  焼け跡にひとつ~

ちぎれた写真の  思い出探し~ 

写らぬ部分を  きれいに描き込み~

位牌にあなたの  名前を呼べば~ 

微笑み返す  補修後の遺影~


第①位
 『アイスクリン』を「夏の思い出」の旋律で
(初代聞得大君良江作)


♪夏が来ればお店出す~

はるかは高二名護娘~

ブルーなパラソル 熱(アチ)ビ一ラチー 

ジリジリ焼ける ブチクン道~

アイスクリンの花が 咲いている~

売上(ゆめ)見て咲いている 道のほとり~

チムグリ色に 黄昏(たそがれ)る~

はるかの売上(ゆめ)~遠い売上(ゆめ)




(週刊レキオ1994年12月16日掲載)